赤き死の訪れ/ポール・ドハティ
- 作者: ポールドハティー,Paul Doherty,古賀弥生
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09/11
- メディア: 文庫
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『毒杯の囀り』に比べると、謎にも解決にもぐっと本格色が強まり、ミステリ・ファンが楽しめる可能性はより増している。一方、前作にはイギリス王位に絡む政治問題が影法師を投げかけていたが、今回はそれが払拭されている。被害者たちが中近東で傭兵としてカリフのために戦っていた、という設定はいかにも歴史小説っぽい。しかしこれ以外は、町の描写も含めて歴史小説ならではの風味は後退している。作品を楽しむ一番の近道は、殺人事件そのものと探偵コンビの捜査にじっくり付き合うこと、というわけだ。なお、アセルスタンとクランストンはそれぞれ個人的な悩みを抱えつつ事件に当たるので、個性が更に強く感じられるようになった。ここら辺も読みどころか。
総じて肩の力を抜いて楽しめる佳品であり、訳出を続けてほしいシリーズであることが確認できたといえよう。……にしても『シャトゥーン』といい『首挽村の殺人』といい、本書といい、今年のミステリ界では熊大活躍ですな。