不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ずっとお城で暮らしてる/シャーリイ・ジャクスン

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

ずっとお城で暮らしてる (創元推理文庫)

 少女メアリは、家族が毒によってほぼ皆殺しにされた屋敷で、姉・伯父・猫と暮らしている。近隣の村人から迫害を受けていると信じるメアリは、たまの買い物に出かける他、屋敷に閉じこもって空想の世界に生きていた。そんなある日、従兄チャールズがやって来た……。
 少女の目に映る《世界の悪意》は、妄想なのか現実なのか。全ては不分明だが、彼女の世界が閉じていることはひしひしと伝わってくる。これはそんな小説である。僅か250ページ弱の中で作者が丹念に作り込んだ、幼い狂気の箱庭。それはとても精緻で美しく、しかしとても哀しくて怖いものなのだ。傑作である。