不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

記憶をなくして汽車の旅/コニス・リトル

記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫)

記憶をなくして汽車の旅 (創元推理文庫)

 目覚めると、わたしは記憶を喪失してオーストラリア横断鉄道の車中に。だが初対面のおじさん一家(と思われる人々)や婚約者の青年医師(と名乗る男)とメルボルンで合流し、旅はさらに続く。旅の途中では不思議な事件が次々起こり、遂には殺人事件まで! 犯人は誰? そしてわたしは誰?
 ヒロインは列車から降りるだけでトラブルに巻き込まれずに済んだはずだ。しかし何を思ったか、よせばいいのに記憶喪失のまま長距離列車に乗り続け、一族(と考えられる人々)と一緒に旅をして大変な目に遭ってしまうのだ。まさに自業自得だが、おかげで我々は楽しい話が読める。彼女には感謝しなければならない。
 基本的に物語はユーモアタッチで進む。ミステリとロマンスが手際よくまとめられ、ヒロインの正体探し、殺人事件の謎の行方が読者を魅了する。短いこともあって軽く読めることもあり、広くおすすめできる作品となっている。それこそ鉄道の旅のお供にいかがでしょうか?