不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

この男危険につき/ピーター・チェイニー

この男危険につき (論創海外ミステリ)

この男危険につき (論創海外ミステリ)

 名うてのワル、レミー・コーションは、アメリカ人資産家の令嬢ミランダ誘拐を計画し、渡欧中の彼女を追ってロンドンまでやって来た。だが彼女を狙うのはレミーだけではなかった!

 レミー・コーション…………………タフガイ

 登場人物表の主人公紹介をこれだけで済ますことに全てが象徴されている。頭よりは腕っ節で勝負するタイプのギャングが敵として出て来て、それをタフガイの主人公がいてこましてゆく。女にもモテてモテて大変なことに。ただし頭脳戦が全くないわけではなく、さすがに緻密なコン・ゲームというわけには行かないが、適度に騙し合って物語に隈取を付けている。短いページ数(実質200ページ)を一気呵成に描ききる勢いある筆致も魅力的。荒唐無稽だが、こういうワルぶった男もカッコいいです。少なくとも、小説で読んだり映画で観たりする分には。
 ……などと思って油断していると、物語は終盤で少しだけ驚くような展開を見せる。まあだからといってこのタイプの小説が嫌いな人は、特に読まなくても良いと思う。だが、単なる食わず嫌いであれば是非一度お試しあれ。バカで楽しいよ!