不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

四神金赤館銀青館不可能殺人/倉阪鬼一郎

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

四神金赤館銀青館不可能殺人 (講談社ノベルス)

 四神地方の新興の名家・花輪家が所有する銀青館に招待された売れない推理作家・屋形。銀青館には館主をはじめ、ミステリ好きが集まっていた。やがて不可思議な殺人事件が発生する。一方、古来より四神地方を牛耳っていた四神家が所有する金赤館にも犯罪の不気味な影が……。
 短くまとまっているにもかかわらず、実に歪な作品である。名家同士の対立、古くからの因習、来訪する推理作家、密室殺人などなど、探偵小説のガジェットはてんこ盛り。ホラーっぽい雰囲気の盛り上げもなかなかで、たとえばざわざわと森が騒ぐ箇所などは素晴らしい。ここにメタ要素とバカトリックがぶち込まれ、他の作家にはほとんど見られない特殊な雰囲気が醸し出されるのである。爽やかな著者近影も含め、遊び心に満ちたバカミスの逸品といえよう。好事家には強くお薦めしたい。