不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ゴーレム100/アルフレッド・ベスター

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 22世紀のアメリ東海岸はスラム化し、《ガフ》と呼ばれていた。そこの支配階層に位置する有閑マダム《蜜蜂レディ》一党は戯れに降霊術の真似事をやらかすが、実はゴーレム100という何かをガフに呼び寄せてしまい、不可思議で残虐な猟奇殺人を多発させてしまう。一方、香水製造会社CCCでは、同社に欠かせない開発研究者ブレイズ・シマの業務効率が低下していた。CCC経営陣はシマの身辺を探るべく、精神工学者グレッチェン・ナンに調査を依頼する。その調査が進むにつれ、シマと猟奇殺人の関連性がうっすらと見えてくる。だがその頃、ナンはシマと愛し合う仲に……。
 ゴーレム100の正体の追究を縦軸に、『コンピューター・コネクション』を遥かに越える大量のジャンク騒ぎを横軸にして物語は紡がれる。しかし徐々に二つの軸の方向関係が崩れてきて、終盤は全てが渾然一体となるのだが、それでもなお何かを読者に強烈に訴えかけてくる。ページから読者に直接襲い掛かる熱気と来たら……! 意味不明な箇所ですらリーダビリティが高いのも恐ろしい。ただ事ではない小説がここにある。訳も凄まじいの一言。
 全き理解を最重視するタイプの読者は読まなくても良いが、それ以外の小説好きには強くおすすめしたい。