不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

スラッシャー 廃園の殺人/三津田信三

スラッシャー 廃園の殺人 (講談社ノベルス)

スラッシャー 廃園の殺人 (講談社ノベルス)

 失踪したホラー作家が、自作に出て来る廃園を元に作り上げた《魔庭》。そこで肝試しに挑んだ学生たちが死体で見付かるなど、恐ろしい噂も絶えない。その庭園を格好の舞台と捉え、ホラー映画を撮ろうとスタッフと役者たちがやって来る。彼らは不気味な風情で佇む《魔庭》の中に踏み込んでゆくが……。
 B級ホラーのノリで、殺人鬼が登場人物を一人また一人と屠る様を描く。一発ネタをベースに、見事な伏線回収やレッド・ヘリング(あからさまだが)を通じて、シンプルなミステリに仕上げている。良くも悪くも単にそれだけの小説であり、廃園という舞台の美、登場人物の描写といった点では食い足りない。
 総じて気楽に読むべき作品であり、その前提に立てば期待に背く作品でもないだろう。特に、傑作『首無の如き祟るもの』の次に出た作品だからといって、肩を怒らせて当たるのは厳禁だ。