果断／今野敏

果断―隠蔽捜査〈2〉

　大森警察署長となった竜崎は、着任早々、メンツよりも正論の重視を徹底する異能ぶりを発揮し始めていた。そんな中、管内でＳＡＴも駆け付けるような重大事件が発生する。しかも時を同じくして、竜崎の家庭でも問題が持ち上がり……。
　前作『隠蔽捜査』で見せた好調は維持されている。竜崎の活躍は鮮烈だし、他の登場人物との会話や議論も非常に面白い。相対する脇役が素晴らしいのも拍車をかけており、癖も強いがその分魅力的な警官たち、くっきりとキャラ立ちしている竜崎の家族といった辺りが、竜崎とときに強調し、ときに反発しつつ、物語を盛り上げているのだ。比較的ストレートなプロット、現場が近いゆえの臨場感が、前作の《警察官僚が担う、表からは見えづらい重要な責務》というテーマを薄れさせたが、だからこそ通常の警察小説に近くなったとも言える。いずれにせよ、今回もまた非常に面白く読める作品に仕上がっており、広くおすすめしたい。
　なお、今野敏はオタク文化にも造詣が深いが、本作ではその一端を垣間見せており、微笑ましい限りであった。