北ドイツ放送交響楽団
- クリストフ・フォン・ドホナーニ(指揮)
渋くてあっさしているが「渋くしてやろう」「あっさり進めてやろう」という作為は皆無。時間が経つに連れ、指揮にもオケにも熱が入って来るのだが、それもまた自然になされており、故意は感じられなかった。他人と違うことをやろう、曲から新しい何かを掘り出そう。そういった色気など全くない。バランス・テンポ・リズム等々の一切合財について、(ブラームスや曲のイメージから逆算したのではなく)スコアにとって最上と思われる方法を選び、鳴らしてゆく。
ドホナーニは、演出に背を向け、禁欲にすら背を向け、ただただ音楽のみを希求している。情感やそれに伴う感動は、演奏者が意図せずとも音楽自身が自然に出すものと信じて。全てが常套に落着するので、「何が面白いのか」と思う聴き手もいたに違いない*1。だが、聴いた後の充実感は、紛れもなく本物だと思う。アンコールすら同じスタイルなので参った。本当に素晴らしい演奏に、ただただ感謝。
*1:もっとも、客席は沸いていました。