不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

砂の城の殺人/谷原秋桜子

砂の城の殺人 創元推理文庫

砂の城の殺人 創元推理文庫

 美波の父がスペインで消息を絶って5年。彼女の母は気疲れもあって体調を崩してしまう。一刻も早く洋行のための資金を貯めて、父を探しに行かねば! というわけで、美波の今回のバイトは、廃墟撮影の助手。そして向かった屋敷には、ミイラ化した死体が!
 多少分厚くなって再始動した、シリーズ第三弾である。前二作は仕掛けが非常にシンプルであったが、今回は推理合戦の精度が目に見えて向上し、トリックも複雑化する(少なくとも単純な作りではない)など、よりマニアックになった。真相の隠し方、伏線の張り方なども、相変わらずなかなかうまい。非常に堅実な本格ミステリであるといえよう。この見取り図は変な気もしますが、まあそこはそれ。押し並べてなかなか楽しめる本格ミステリでありました。そしてお父さんの消息も次で遂にわかる……のか? あんまり引っ張らないようにお願いします。
 ただ、こういった登場人物の造形はなあ……。女性陣の描写が実にイデアだし*1、悪役もあまりに典型的。特に主人公はもっとしゃきっとさせないとダメだと思います……。こういうのって、ラノベ読者にはどう思われてるんでしょうか。ちょっと訊いてみたい。

*1:ラノベだから」という見解には、取り敢えず与しない。