不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

バビロニア・ウェーブ/堀晃

バビロニア・ウェーブ

バビロニア・ウェーブ

 太陽系の近傍で発見された、レーザーの巨大な束《バビロニア・ウェーブ》。この天体からエネルギーを取り出すことで、地球はエネルギー危機から一気に脱した。しかし人類の大方はそれだけで満足し、この天体が何なのか探ろうとしなくなり、また外宇宙の知的生命捜索への興味も薄らいできていた。そんな中、バビロニア・ウェーブへ飛ぶ宇宙飛行士が一人……。
 基本的には、この《バビロニア・ウェーブ》の設定に依拠する物語だが、一応人間ドラマも展開される。今は廃墟となっている宇宙ステーションで生まれ育ち、地球に降り立っても違和感しか感じない男が主人公を務め、その疎外感と《宇宙の深淵を知りたい!》という欲求が絶妙に調和するのが素晴らしい。しかし、これすらも壮麗な《バビロニア・ウェーブ》の前には霞む。
 変な天体を捏造するタイプのSFが大好きな人には、傑作となるはずであり、強くお薦めしたい。