キューバ・コネクション/アルナルド・コレア
- 作者: アルナルドコレア,Arnaldo Correa,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/02/09
- メディア: 文庫
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キューバの、財政難等によりリストラされかけている工作員の活躍を、子供たちのアメリカ亡命に関連付けて多面的に描いた作品。基本的には渋いエスピオナージであり、父子・上司部下・友人・男女の人間ドラマが味わい深く描出されてゆく。安直な盛り上がりは皆無だが、どのような局面においてもヒューマニズムを忘れない。ただし結構シビアな側面も見せるため、正確を期せば「甘さはないが温かさはある」ということになるだろう。
なお、主人公を遺恨から付け狙うCIA幹部キングが、副主人公として扱われていることにも注目したい。ル・カレの傑作《スマイリー三部作》において、主人公の宿敵は物語の背面に隠れており、実際の登場はほんの一瞬であった。本作は違う。主人公とその敵の《個人事情》が明確に対比されており、これはこれで味わい深い。
なおコレアはカストロも誉めたキューバの作家だが、小説の中でキューバに肩入れしている様子は特に見られず、政治的には非常にニュートラルな立場を保っている。これは嬉しい驚きであった。冷戦が終結した国際情勢の中で、どのようなエスピオナージがあり得るかという点につき、極めて誠実な回答を提示した作品といえるだろう。渋いが、広く薦めたい逸品である。