不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

警官倶楽部/大倉崇裕

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

警官倶楽部 (ノン・ノベル)

 二人の制服警官が悪徳宗教団体の裏金運搬車を襲撃する。しかし、彼らは本物の警官ではなかった。本職顔負けの技を持つ警察愛好家サークルの者だったのだ。彼らはある善良な目的のため強盗をしたのであったが、しかしそれとは別に、折悪く仲間の息子が誘拐されてしまう。そして二人は、カルト教団闇金金融、警官マニアの三つ巴の戦いが始まる……のか?
 マニアたちが巻き起こす大騒動という点では『無法地帯』と同様だが、マニアとしての私利私欲ではなく、仲間の巻き込まれた事件を解決するため頑張るという点は異なる。ただしそうは言っても、友情や恋愛は特段強調されず、登場人物のマニア性が物語の主たる魅力を成すところまで行かず、全体としてはしっかりした構成のもと、活劇がかなり素直に展開される。これらの点は長所と捉える人もいるだろうし、物足りなさを感じて不満に思う人もいるだろう。コン・ゲーム風の活劇を気軽に楽しみたい人にはお薦めである。