不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

東京要塞/海野十三

海野十三全集 (第5巻) 浮かぶ飛行島

海野十三全集 (第5巻) 浮かぶ飛行島

 一帯にやたら警官が立ち並ぶ中、通り掛かった酔っ払いが怪しい男に投げ飛ばされ、挙句お堀へ突き落とされる。しかし警官隊はそれを見ていても助けに入らない。時あたかも、それまで潜在敵国とみなされていた某大国から、巨大な記念塔が送り届けられ、東京中の話題をさらっていた冬であった。
 帆村荘六登場の、鬼畜米英(この作品の場合、それは英国らしいが)に対する喧嘩スタイルが顕著な一編。日中戦争が勃発してから書かれているので仕方ない面があるものの、今にして思えば、かくも盛大に外国と敵対することを表明する小説は不気味でならない。作品の出来栄えはなかなか良く、荒唐無稽な某大国の計略と、それを大真面目に阻止する日本の活躍が、活き活きと描かれる。楽しめましたよ。