不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

ヴェルサイユの影/クリステル・モーラン

ヴェルサイユの影 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1796)

ヴェルサイユの影 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1796)

 ヴェルサイユ宮殿の庭園で、開館時間前のある朝、女性の死体が発見される。夜間は警備システムにより厳重に閉鎖されているこの宮殿の敷地内に、犯人と被害者はいかにして侵入したのか? ボーモン警視は捜査を開始するが、やがてヴェルサイユ宮殿では同様のシチュエーションで殺人事件が連続し、捜査陣は窮地に立たされることに……。
 各種要素が非常に洗練されていて読みやすく、印象は悪くない。ヴェルサイユ宮殿の華麗なイメージもなかなかのものだ。また、歴史ミステリではなく、現代を舞台としているので、この宮殿(=観光名所)をいかに美しく描かれても違和感など生まれようがないのもポイント。ただし、興味深いことや複雑なことは一切起きない。ミステリとしても全くつまらない。「流麗なだけ」の小説をどう評価するか、という個人の嗜好に全てがかかって来るはずだ。手持ち無沙汰な時にするする読むには適している。