不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

QED 河童伝説/高田崇史

QED  河童伝説 (講談社ノベルス)

QED 河童伝説 (講談社ノベルス)

 利根川水系の、河童が住むとされる川で、手首を切り落とされた死体が発見される……。一方、棚旗奈々一行は、相馬野馬追祭を見物に来ていた。
 いつも通りの作品。今度こそ大事件と言わんばかりの振りが前作であったが──決して真に受けていたわけではないものの──その期待は裏切られることになる。とはいえもちろん、さすがに事ここに至ってこのシリーズに対し「歴史と殺人事件の関連性が薄い」などと言うつもりはない。それは先刻承知であり、了解の上で読み始めているのである。言いたいのはこれだ。
 もう正直、この手の歴史ネタには飽きた。
 このシリーズは、時の権力がいかに民人に非道なことをして来たか、という同じモチーフを繰り返しているに過ぎず、肝心の質も下がっており、最早単なる語呂合わせとなっている。図柄も、俺はアレどうやっても胡瓜に見えないんですけど。さらに、トンでも説に相も変わらず感じ入っている登場人物にも、そろそろどうかと思い始めた。登場人物と言えば、人間関係が一向に進展しないのも問題か。さらに、殺人事件に関するプロローグも、真相が非常に安直でがっかりした。悪人を類型的にしか描けなくなっており(以前はここまで酷くなかったように思う)、これもまた物足りない。
 ホームズや坂本龍馬辺りで懲りたのかも知れないが、それでもなお敢然と、「ヤマト王権にまつろわぬ人々」以外の新機軸を探って欲しい。歴史ネタではもう新機軸を打ち出せない、しかしQEDの現状に安住したいというのであれば……是非に及ばず。