不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

狼の一族/若島正(編)

 異色作家短編集も遂に復刊分は終わり、新刊アンソロジーに到達した。第1弾はアメリカ編で、11編が収められている。顔ぶれは、以下の通り。

  1. ジェフを探して/フリッツ・ライバー
  2. 貯金箱の殺人/ジャック・リッチー
  3. 鶏占い師/チャールズ・ウィルフォード
  4. どんぞこ列車/ハーラン・エリスン
  5. ベビーシッター/ロバート・クーヴァー
  6. 象が列車に体当たり/ウィリアム・コツウィンクル
  7. スカット・ファーカスと魔性のマライア/ジーン・シェパード
  8. 浜辺にて/R・A・ラファティ
  9. 他の惑星にも死は存在するのか?/ジョン・スラデック
  10. 狼の一族/トーマス・M・ディッシュ
  11. 眠れる美女ポリー・チャームズ/アヴラム・デイヴィッドスン

 異色作家短編集の一冊ということで、奇妙な味の話が多いのか……と思う向きも多かろうが、スラデックラファティ、デイヴィッドスンがいる時点で、良い意味で無茶苦茶な作品も一定量含まれているのは予想できる。実際、変としか言いようのない作品も多めにチョイスされており、なかなか楽しい。ただ、イッてしまっている度合いは意外に低く、厳選すれば「ベビーシッター」と「他の惑星にも死は存在するのか?」のみが前衛性を持ち、しかも後者はスラデックにしては意味不明度がまだ甘め。そして、ミステリ・ファンよりもSFファンに強くアピールする作品が揃っている。全体としての質は高く、良いアンソロジーといえよう。
 そんな中で個人的なお気に入りは、「どんぞこ列車」「象が列車に体当たり」「浜辺にて」「他の惑星にも死は存在するのか?」「狼の一族」「眠れる美女ポリー・チャームズ」だろうか。いずれも傾向は全く異なりますが。