不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

杖の秘密/マイケル・ムアコック

 アジアから舞い戻るホークムーン、ブラス城再攻撃の準備と、ある陰謀が進行する暗黒帝国……さあ、シリーズの完結だ!
 数ページごとの頻度でイベントを起こし読者の興味を惹きつつ、異様にサクサクと物語は進む。この構造はシリーズ第1作から変化がない。筆が淡白であり、その場その場の鮮やかさより進行を優先してしまう関係上、暗黒帝国と雌雄を決する、本巻どころかシリーズ全体のクライマックスが訪れるはずなのに、割としょぼいというか、もうちょっとぶち上げても良いように感じた。しかし、これがシリーズの持ち味なのだろう。何度も言うが、エルリック・サーガと比べ遥かにシンプルなので、読書初心者にもすすめることができる。正直、ちょっと食い足りなかったが……。