不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

天使の眠り/岸田るり子

天使の眠り

天使の眠り

 職場仲間の結婚披露宴にいた女は、13年前の愛人と同姓同名を名乗り、おまけに彼女の娘は確かにあの時の娘だ。だが、どう見ても別人のように見える。本当に別人なのか、それとも本人なのか? 男は女のことを調べ始めるのだが……。
 前作のようなメタに逃げず、トリッキーなサスペンスを正面から扱った作品。登場人物の描写は秀逸であり、彼らの性格が実にくっきりと描き出されている。イヤ話でありながら救い・安らぎもある辺り、なかなか面白い。若干地味な印象もあるし、ガジェット重視型の本格読者にはアピールが弱いものの、完成度の高い逸品と言えるだろう。