不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

地獄の使者/海野十三

海野十三全集 第11巻 四次元漂流

海野十三全集 第11巻 四次元漂流

 金満家の旗田が屋敷で殺され、帆村荘六の知り合いの妹が勾留される。しかし、被害者はどうも評判の良くない男で、彼の弟、家政婦、お手伝い、雑役もまた妙に怪しい……。
 名探偵・帆村荘六登場が登場する割には、おとなしい推理長編(微妙に科学小説)。殺害方法は簡単に見当が付くし、その他の工作も割合単純なものだ。展開も特にトチ狂っておらず、過度な期待を抱くと肩透かしに終わろう。しかし代わりに、よく整頓された作品であり、読みやすくまとまっている。後には何も残らないが、まずまず楽しめる。戦後に帆村荘六が活躍するのは珍しいので、その点で貴重な一作だ。