不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

天使が開けた密室/谷原秋桜子

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

天使が開けた密室 (創元推理文庫)

 行方不明になった父を探しに行く費用を捻出するため、高校1年生の倉西美波はバイトに勤しんでいた……と思ったら、客の持っていた壺を割ってしまい、弁償する羽目になる。そんなとき、「寝ているだけで一晩5,000円」という美味しいバイト話が転がり込んでくるが、それは彼女を密室殺人に巻き込む契機となったのだ……!
 富士見ミステリー文庫から出ていたシリーズの復刊。このように創元推理文庫で出てもさして違和感のない内容となっており、作中で「いい話」っぽく扱われる要素が冷静になって考えてみると結構アレな辺りも含め、本格ミステリとしてのツボを押さえた作家・作品であるのだと思う。真相はわかりやすいが、完成度は低くない。コミカルな展開も悪くないし、ラノベなのに?グロ描写があるのも個人的には問題とは感じなかった。ましてやもう創元推理文庫に入っているのだから、尚更気にすべきではない。広くおすすめできる作品と言えるだろう。
 ただ、ラノベをあまり読まないので自信はないのだが、キャラ作りがベタ過ぎるのではないかと思わないでもなかった。
 併録の短編「たった、二十九分の誘拐」は、本格濃度は低いが特に悪くもない一作。いいんじゃないでしょうか。