不壊の槍は折られましたが、何か?

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四次元漂流/海野十三

海野十三全集 第11巻 四次元漂流

海野十三全集 第11巻 四次元漂流

 自宅に立派な研究室を持っている木見雪子学士(25)が、自宅より不可解な失踪を遂げる。それ以降、彼女の自宅付近では、半透明のゆらめく女性幽霊?が見られるようになり……。
 海野十三お得意の、SF的探偵小説。作中における、四次元の解説はなかなかだが、ラッカーの『セックスフィア』の方がわかりやすかったようにも思われる。図があるのとないのとでは結構違うものです。
 『四次元漂流』の物語の内容自体は、不気味な幽霊騒動がなかなか印象的に描かれており、また一部よくわからない人物動向がある辺り、いかにもこの作家らしくて微笑ましい限りだ。巻頭に置かれている、初出版時の表紙や挿絵での雪子女史の絵は、キリッとしたメガネ・エリート好きにはイケているかも知れない。1946〜47年の作品なので、女性が天才科学者として登場するのも興味深い。