最後のウィネベーゴ/コニー・ウィリス
- 作者: コニー・ウィリス,大森望
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2006/12/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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コニー・ウィリスの腕前を堪能できる作品が揃っており、楽しめる。全編、構成もストーリーテリングも抜群にうまい。
一番短くてその分風刺性とユーモアが顕著に出る「女王様でも」、居候の異星人とコミュニケーションがうまく行かない中、登場人物入り乱れてのコミカルな騒動が持ち上がる「スパイス・ポグロム」*1は、話そのものが陽気で、読むだけで楽しい気分になるだろう。悲恋?が描かれる「タイムアウト」も、『航路』や『ドゥームズデイ・ブック』で見せた、深刻そうな中にも織り交ぜられるユーモア成分が絶妙な働きを見せる。
その一方で、徹頭徹尾物悲しさに包まれる「最後のウィネベーゴ」も、ペットを飼う人、動物を愛する人であれば感ずるところ大であろう。もちろん、ペットがいない人(私もそうだ)にも、門戸は開かれている。そう、この短編は一種の終末譚なのである。大袈裟なところは何もないが。
個人的には、ウィリスは長編だと若干くどい作風を示すと考えるが、短編だとそれほど気にならない。より広くおすすめできる素晴らしい一冊である。