不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

警察庁から来た男/佐々木譲

警察庁から来た男

警察庁から来た男

 北海道警察本部に、警察庁から、キャリア組の藤川警視正が特別監察にやって来る。藤川は監察の目的を明示しないまま、『うたう警官』において道警の裏金問題を果敢に道議会で証言した津久井刑事に協力を要請する。一方、同じく『うたう警官』において活躍した佐伯刑事は、札幌のホテルでの部屋荒し事件を探るうち、過去の会社員転落事件での警察の対応にどこか不審なものを感じて……。
 若干タガが外れていた『うたう警官』と異なり、いい感じで緊縮・凝縮している作品である。構成もうまいもので、腐敗の全体構図が見えてこない中、藤川警視正の監察と佐伯刑事の捜査がなかなか合流しないのも、読者の興味を惹き付けて、読ませる。警察内部も、実際にどうかはさておき、まずはしっかりと描き込まれている。そして、キャリアのプライドと、叩き上げ刑事たちの根性が、いずれも肯定的に描出されるのも読んでいて気持ち良い。一段組300ページ未満と、手短にまとめているのもいとをかし。
 というわけで、作者、グッジョブ!