不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

よしきた、ジーブス/P・G・ウッドハウス

よしきた、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

よしきた、ジーヴス (ウッドハウス・コレクション)

 バーティーは、またもや服装に関してジーヴスと対立していた。そんな中、友人ガッシーがジーヴスに恋の相談をしようとやって来る。バーティー腹立ち紛れに、自分が有能な執事に頼らずとも立派に何でもこなせると見せ付けようと、よせばいいのにの相談には乗るなとジーヴスに命じ、自らガッシーの恋愛の手助けを始める。もちろん事態は加速度的に無茶苦茶になってゆく……!
 《抱腹絶倒のコメディ》と称される物語にありがちな要素は全て登場する。処理方法も斬新ではない。しかしリアルに噴いてしまうのはどういうことだ。惹句のとおり《英文学史上もっとも滑稽な数十ページ》たる表彰式の場面はやはり素晴らしいが、他にもオモチロイ情景と展開が続出。そしてジーヴスによる事態収拾もまた、彼の腹黒さとウッドハウスの人間観察の鋭さを証してを余すところがない。伏線の回収という、ミステリ的な手法は今回も健在である。まことに素晴らしい作家であり、作品であると言えるだろう。まだまだ付き合いますよ。