不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

螺鈿迷宮/海堂尊

螺鈿迷宮

螺鈿迷宮

 《バチスタ・スキャンダル》から一年半。東城大学の医学部生・天馬は、留年を繰り返し医療への道をあきらめようとしていた。そんなある日、幼馴染みの新聞記者・葉子は、天馬に桜宮病院への潜入捜査を依頼する(というか命ずる)。桜宮病院は東城大学と切っても切れない施設であり、終末医療の最先端施設として注目を集める一族経営の病院らしいが、病院を調べていた人間が失踪するなど、どうも怪しいのだ。
 『チーム・バチスタの栄光』も『ナイチンゲールの沈黙』も読んでいない状況で『螺鈿迷宮』に手を出すのは順番がおかしいのだが、まあそれなりに楽しめた一冊。とはいえ、全般的にかなり荒削りで、展開も文章も構成もテーマ設定も、うまい素人が書きたいことを委細構わず書き散らしているような感じ。キャラにもストーリーにも躍動感があり、エンターテインメントとして勢い良く読めるのは評価できるが、作家としての将来を不安視するに足る作品内容ではある。もうちょっと落ち着いて書くべき作品だったと思う。筋立てが錯綜もするんだし。