不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

誘拐の誤差/戸梶圭太

誘拐の誤差

誘拐の誤差

  • こんな警察小説が今まであっただろうか!? 不可解な動機にスリリングな展開 驚愕のラストにあなたは絶句する!!
  • 礼乎(10歳)が学校から帰ってこないんです。母親からの届けを受け、警察が捜査を開始した。1週間後、悲しくも礼乎が死体となって発見された直後、犯人から礼乎の身代金を要求する連絡が入る。困惑する警察。犯人の動機・目的は不明。捜査陣の足並みは乱れ、捜査は難航する。

 ……という帯なのだが、粗筋はともかく、煽りはよくもまあこれだけ嘘つけるなあと、清々しさまで感じる一冊。というか、表紙はともかく見返し見た瞬間に、帯とは全く違うものが出ることは確実であろう。霊魂によって語られる、安い事件の安い捜査・安い人々・安い展開・安い顛末を描く。落とし方もなかなか新鮮(割とバカミス)であったが、これは私があまり良い戸梶読者ではないことによるのかも知れない。リーダビリティは高く、読みやすいので、異常なまでに俗悪で卑しくて安いこの雰囲気を拒絶しない人には、「なかなか面白いですよ」とおすすめしておきたい。私個人は好き。この目を覆わんばかりの安さは、たまに読むと「人間の(実は底浅い)深遠を抉っているのでは」と思わされる。