不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

震える熱帯/ボブ・モリス

震える熱帯 (講談社文庫)

震える熱帯 (講談社文庫)

 元アメフト選手のザックは無実の罪で2年の刑務所暮らしを強いられていた。念願の出所日、恋人の代わりに迎えに来たのは見知らぬ男で、しかも襲って来る。辛くも逃げ延び自宅に帰ったものの、木とか船とかが勝手に売却されており、雇っていたアメリカ原住民の男はいなくなっている。そしてここにもなぜか刺客が! 命からがら恋人の待つバハマへ向かうザックだったが……。
 いつまで経っても想い人と会えない主人公は、読んでいて可哀相というかなかなか面白い。基本的には明るい雰囲気でわかりやすく進むが、ミステリ的な要素も水準以上。全体的にさっぱりとしたお味付け(いくらでも重くできる冤罪と投獄時の状況について、さらりと触れるだけであることも大きい)で、読みやすい。海外ものに抵抗のない人が、暇つぶしのため軽く読み流す小説を探している場合は、お薦めである。