不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

狂嵐の銃弾/デイヴィッド・J・スカウ

狂嵐の銃弾 (扶桑社ミステリー)

狂嵐の銃弾 (扶桑社ミステリー)

 建築家のアート・ラティマーは、海辺に変な形の屋敷を建て、愛妻ローレルと共に住んでいた。しかし妻が癌に倒れ、今は一人暮らしである。ある木曜日、屋敷に、36時間以内にハリケーンが来るとの報が届く。本来は避難すべきだが、建築強度を見届けるため、ラティマーは、愛犬ブリッツと一緒に屋敷に留まることを決意する。しかし、凄まじい悪天候なのに、旧友だの色情狂だのが次々に屋敷を訪ねて来て、あれよあれよと言う間に、主人公は、近所の家で開かれている怪しげなパーティーに出席することに……。
 バカミストークショーでの推薦本第3弾。ちょんぼスレスレ、いやちょんぼだちょんぼ! という感じの素晴らしい作品。05年11月〜06年10月の新刊の中では、最強クラスのバカミスではなかろうか。破壊力というか自壊力抜群。怒るか笑うかの二択を、読者は厳しく迫られている。とはいえ、主人公が予想も希望もしていない千客万来ぶりはそれだけで楽しく、妻を失った男の哀愁や寂寥感が濃やかに描かれ、登場人物もいい感じでとち狂っているのも面白いが、奇妙な味が最初から最後まで濃厚に感じられるのも素晴らしい。だからこそ、終盤のアレも、良くも悪くも映えるのだ。バカミス好きは必読である。