スノーバウンド@札幌連続殺人/平石貴樹
- 作者: 平石貴樹
- 出版社/メーカー: (株)南雲堂
- 発売日: 2006/11/15
- メディア: 単行本
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読んでいて、非常に寒かった。本格ミステリとしての完成度は高く、推理はさすがに堅牢だが、小説としてド下手なので、読んでいて苦痛。特に若者の描写が最低レベルで、二十代の女性弁護士間の会話すら厳しい。ハイティーンの登場人物たちに至っては、何をかいわんや。この小説は、登場人物の多数が、一人称の手記を次々書き継いでゆく形式をとるのだが、作家はここで、できもしないのに若者の言葉遣いを取り入れようとする。ほとんど全てのページにおいて、違和感ばりばりだ。会話文はおろか地の文の語尾にまで「ねー。」とかが頻繁に入る、58歳のおっさんが書いた小説を、ドン引きなしに読み通すことは私には無理な相談であった。物語の舞台は1990年の札幌だが、現在(2006年)と1990年の16年のタイムラグをもってしてもなお、この違和感を説明することは難しい。正直、読むに忍びない。
本格ミステリ(しかも水準以上は確実な!)を、登場人物の言動が不自然だ云々で責めるのは後ろめたいのだが、個人的に容認できないレベルに到達したので敢えてこう書いている。作家には、自分ができもしないことはやらない勇気も必要ではないか、とすら思ってしまった。書きようによってはどうとでもなったはずであり、余計に悔やまれる。