不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

移動都市/フィリップ・リーヴ

移動都市 (創元SF文庫)

移動都市 (創元SF文庫)

 60分戦争で文明が荒廃した遙かな未来。世界は都市間自然淘汰主義に則り、移動しながら狩った狩られたを繰り返す都市と、反移動都市同盟(強大な防衛ライン付き)に分かれていた。移動都市ロンドンに住むギルド見習いの孤児トムは、ギルド長の命を狙う謎の少女ヘスターを助けるが、ギルド長に都市外に突き落とされてしまう……!
 都市が都市を食らうという豪快な設定がまずは素晴らしい。失われた旧文明の科学技術、というある意味レトロな設定も、展開上も情感面でも非常にうまく機能している。冒険がスピーディーに進行するのも良い。そしてもちろん読みやすい。ジュブナイルSFとしては極めて高品質な優れものといえよう。話が進めば進むほど、スタジオジブリと化すのはご愛嬌といったところか。作者の腕は確かと見たので、続編にも期待したい。