不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

きつねのはなし/森見登美彦

きつねのはなし

きつねのはなし

 骨董を巡る5つの奇妙な物語。古都・京都のそれっぽい雰囲気を濃厚に絡めつつ、怪談をじっくりと描き出している。筆に余裕があって風格すら漂うのは興味深い。非モテルサンチマン路線を突っ走っていた既往2冊と比べると、まるで別人。落ち着いた、しかし翳りの濃い情感は、なかなかに味わい深い。