不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

第九の日/瀬名秀明

第九の日 The Tragedy of Joy

第九の日 The Tragedy of Joy

 『デカルトの密室』で活躍した祐輔・玲奈・ロボット《ケンイチ》のトリオによる、愛情に似た繋がり、機械知性、思想性を巡る物語。作家の頭脳において錬成されたテーゼの象徴的描出、という感じの作品4編で構成されている。考察対象はSFおよびミステリであり、その思索深度には驚倒するばかり。
 とはいえ、私はアホなんであまり理解もできず、というか付いて行けず、非常に苦しい気分を味わった。アホにもわかるような、一目瞭然のジャンル・ガジェットや、わかりやすい情緒攻撃などの《餌》を撒く素振りさえ見せないのは、本当にカッコいいと思う。あと、これは個人的所感に過ぎないのだが、《物語》要素を更に削ぎ落とせば、もう少し広めに支持も得られるような気はする。そう、天城一のように。