不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

九杯目には早すぎる/蒼井上鷹

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS)

九杯目には早すぎる (FUTABA・NOVELS)

 小市民的な人物が、イヤな感じで事件に巻き込まれる、スケールの小さいミステリを収めた短編集。ショートショートも4編ほど含まれており、ヴァリエーションに富む……と言いたいところだが、ストーリーこそ違え、最終的な印象は似たようなところに落ち着く作品ばかり取り揃えており、一気に読み通すと悪い意味で慣れてきてしまう。各編の出来栄えはなかなか良いだけに、惜しいことをした。毛色の違うものを数編混ぜておけば、随分違った感想になったことだろう。
 水準は揃っているので、これと指すことは難しいが、強いて挙げると最後の「キリング・タイム」がお気に入り。仕掛けが(予想は付くけれど)一番うまく決まっているし、ラストも気が利いている。