月の骨/ジョナサン・キャロル
- 作者: ジョナサン・キャロル,浅羽莢子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1989/08/01
- メディア: 文庫
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現実と夢がじりじりとにじり寄って行く様がなかなかにサスペンスフルだ。また、カレンのつらい過去、恋愛、結婚、出産が本当に鮮やかに立ち上がっており、またそれらが伴う感情も、一々が、襞に至る部分まで精緻に描かれており、かつ全く押し付けがましくなく、自然に我々読者に寄り添うのである。細部に命を宿らせる名手、ジョナサン・キャロルの面目躍如たるものがあり、圧巻だ。徐々に増す翳りも、読者に《予感》を抱かせて余すところがない。後ろ向きになるだけではなく、前向きな姿勢や希望を、終局的な局面においてすら消し残す辺りも絶妙である。……ってまあ『月の骨』は悲惨な物語ではないですけれど。
とにもかくにも、この人はまったく何と素晴らしい作家なのだろう。ゆめ読み逃してはならぬ! ゆめ絶版だらけにしてはならぬ! いや頼みます、ホントに。