不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

メランコリイの妙薬/レイ・ブラッドベリ

メランコリイの妙薬 (異色作家短篇集)

メランコリイの妙薬 (異色作家短篇集)

 22編所収。ブラッドベリは今までほとんど読んだことがなく、読む度に「ああもっと若い時に読んでいたらなあ」と思っているわけだが、『メランコリイの妙薬』もそんな感じ。良く練られているしセンスがあるのもわかるのだが、如何せんもう私のような老いさらばえた身には訴えかけが弱い。人生の酸いも甘いもかみわけた(かみわけのレベルは低いけれど)人間よりも、まっさらな感受性を未だ維持している人に、より良く魅力がわかる。ブラッドベリはそんな作家であるように思われてならない。
 アイデアではなく、情感勝負の作品が多かったことも、前段落の感想を抱いたことに影響しているのかも。というわけで、所収短編の中では、「誰も降りなかった町」が一番のお気に入りかな。