不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

豆潜水艇の行方/海野十三

怪鳥艇 (海野十三全集 第9巻)

怪鳥艇 (海野十三全集 第9巻)

 豆潜水艇を発明した青木学士、彼と仲の良い水上春夫少年が、後は進水式を待つばかりとなった豆潜水艇の中に入っていると、いきなり米兵が乱入してきて毒ガスを注入、潜水艇ごと運び去ってしまう。彼ら二人の、そして豆潜水艇の運命やいかに……!?
 途中で敵基地に攫われるのだが、そこからの脱出〜大団円が、連載雑誌の都合上、わずか2ページに端折られていて、いくら何でもこれは酷いという状態のまま放置された作品。正直、元からして低年齢向きの平易に過ぎる文体で綴られていて物足りないので、更に不満を募らせることになる。全集ででもなければ読まなくて良い作品と言えるだろう。
 ただし、これほどの平明な文体の児童小説で、アメリカ敵視・日本人としての(名誉ある死を選ぶことが当然という前提に立った)誇り云々を前面に出すのは、現代ではあり得ず、なかなか興味深い。