不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

空襲下の日本/海野十三

海野十三全集3

海野十三全集3

 昭和×年、シベリアから飛来した敵編隊により、帝都東京が空襲を受ける物語。帝都の防空体制がどのようになっているかをなかなか細かいディテールで描く作品だが、それしかやっていない作品でもあり、この中に人間ドラマはあってなきが如し。最後の最後でやたら説教臭くなるのは、恐らくこの作品に《空襲への対応》を啓蒙する意図を含ませていたからでもあろう。我々は、敵機来襲により、その帝都がどうなったか知っているわけで、色々考えてしまう作品でもある。初出が昭和8年4月であったことは興味深い。