狼花 新宿鮫Ⅸ/大沢在昌
- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/21
- メディア: 単行本
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鮫島が主役を張って様々な情動を受けて……という物語では最早なくなっている。もちろん鮫島は捜査し活躍し、事件に関して様々な思いを抱くのだが、人間としての生き様で魅せてくれるのは、女として以前に人間としての自立を志向する明蘭、独自の価値判断に基づき治安を追求する香田警視正、謎に包まれた鮫島の宿敵で明蘭を引き込む仙田、日本最大の暴力団
物語自体はスリリングでなかなか読ませる。流入する外国人犯罪者と、旧来の日本人犯罪組織、そして警察機構=権力の、闘争と妥協、そしてどうしても相容れない観念。それらを、大沢在昌は(恐らく)緻密な取材を基づき、丁寧に描き起こす。高水準の、実に安定した娯楽小説といえるだろう。
今後、鮫島は、シリーズ各作にピンで登場する主要人物を観察し追い詰める機能を有する、「鮫島」という唯一無二の、しかし煎じ詰めれば単なる記号に過ぎない存在となるのだろうか。別にそれが駄目だと言っているわけではない。たとえばリュウ・アーチャーは、記号化した素晴らしい名主人公であった。新宿鮫シリーズが今後どうなるのか、動向を注視していきたい。両津勘吉との共演とかな!