不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

探偵家族/冬の事件簿/マイクル・Z・リューイン

 婦人服店で服を選んでいる美女に、アンジェロ・ルンギは気の効いたアドバイスをおこない、ありがたがられる。直後、彼女シーリアは依頼人としてルンギ家にやって来る。何でも、ポケベルを使って脅されているらしい。一方、その婦人服店の前には小汚い娘たちがたむろして商売の邪魔になり、アンジェロの娘マリーは警察に補導され、親爺さんは白骨死体の事件に首を突っ込むことになり、そしてサルヴァトーレはここ何ヶ月も女性をルンギ家に連れて来ずママは気が気ではない……。
 慣れたからか、『探偵家族』よりは楽しめた。しかし、本当に個人的な話で申し訳ないが、ホームドラマを心底楽しいと思ったことがないので、微妙な思いは拭いがたい。もちろん、《探偵家族》シリーズを悪い作品と断じているわけではない。事実、本作においても、サルヴァトーレの珍しい動きや、ママの息子を思う心、いつもはサルヴァトーレと反目しているのにそこはやっぱり父親である親爺さん、そしてデヴィッドの恋。ここら辺は特記事項。アンジェロ&ジーナ夫婦の掛け合いも面白いし、マリー・デヴィッド姉弟の口喧嘩も面白い。シチューエーション・コメディも外さない。しかしやはり、どうしても私はこの世界に入り込めないのである。もうちょっと黒い方が好きだなあ……。言い掛かりであることは自覚しているので、これらはいかなる意味でも作品の瑕疵たり得ないと言明しておく。
 ただし、視点と場面がものの数ページでコロコロ切り替わる構成は、長編には不向きであろう。お好きな方はどうぞ。