不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

探偵家族/マイクル・Z・リューイン

探偵家族 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

探偵家族 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 ルンギ家は英国バースに居を構える、イタリア系の家族。一家二代(そろそろ三代)で探偵業をおこなうのだ! 親爺さんとママはほぼ引退状態、長男サルヴァトーレは画家(金に困ると探偵業を手伝いに来る)の女たらし、次男のアンジェロは妻ジーナと共にルンギ家所属探偵の主力を形成、長女のロゼッタ経理を担当。アンジェロとジーナの子であるマリー(おませ)とデイヴィッド(コンピューターおたく)は未成年だがたまに探偵業を手伝い、特にデイヴィッドは探偵がやりたくて仕方がない。今日も今日とて、近所の主婦から「洗剤がいつもの所に置かれていない。夫が妙なことに巻き込まれたのではないか」という変な依頼が来る。行け行けルンギ家、いざや行け!
 ホームドラマはそもそもあまり好きではない(読み手としての弱点であることは自覚している)のだが、それは措くとしても、これはちょっとどうかと思った。探偵家族側のドラマが事件に優越するのは問題ないとしても、この家族が数多過ぎでポイントが絞りきれていない印象を受けた。全員が平等に活躍するのは、一見面白そうではあるが、注意しないと話がぶれるだけに終わる。視点の切り替わり多過ぎ&一視点の連続担当頁数少な過ぎが相俟って、単に一作品として完成度を低めているだけのように思われた。ただし、短編ならこのスキームは有効に機能するかもしれない。