緋色の迷宮/トマス・H・クック
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/09
- メディア: 文庫
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エリックによる一人称で語れるが、何かが起きた後で、思い返しながら書いていると思われる。強く漂う無力感が堪らない。上記粗筋だけだと歌野晶午『世界の終わり、あるいは始まり』を連想する向きもあるかも知れないが、無論クックなのであのような突拍子もない展開は辿らず、正攻法で、しかし晦渋に、父と子、引いては家族の関係性に切り込んで行く。物語がどのような結末を迎えるかは言わぬが花だが、胸を打つものは確かにあると言いたい。ミステリ的な興趣よりも、家族というテーマに焦点を当てた逸品として強く推したい。