不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

季節の終わり/マイクル・Z・リューイン

季節の終り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

季節の終り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 テレビのインタビューに答えたサムスンの事務所に、珍しく複数の依頼が舞い込む。一つはコンピューターを駆使する76歳のベイツからで、友人の孫の身辺調査をしてほしいというもの。そしてもう一件は、銀行家ベルダー夫妻からで、妻のポーラの出生証明書が偽造であると判明し、自分がどこの馬の骨かわからなくなったので調べて欲しいというもの。
 ポーラの出自、そして50年前の悲劇的事件が、徐々に明らかになってゆく。相変らず非常によくできているし、サムスンの韜晦に満ちた語り口も愉快の限り。ソフトタッチのハードボイルドであるが、事件の内容は暗く重く、しかし救いもあって読み応え十分。本当に素晴らしいシリーズであり、作家であると思う。