不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

赤い護符/マイケル・ムアコック

 前作『額の宝石』で何とか額の宝石の支配から逃れたホークムーンは、愛しいイッセルダが父親ブラス伯と共に暗黒帝国に戦いを挑んでいるカマルグに戻るべく、半獣人オラダーンと共に旅を続けていた。しかし暗黒帝国側としては裏切り者ホークムーンを許す気など毛頭なく、追っ手を差し向ける。前作の宿敵はメリアダス男爵だったが、今回はユイラム・ダヴェルクである……と思っていたらアレレ。という展開を辿る冒険譚。
 叙事詩的情感を煽り立てる美文*1で綴られるエルリック・サーガとは異なり、《ルーンの杖秘録》は文章が非常にオーソドックス。『赤い護符』でもこの事情に変化はなく、人物と状況を淡々と述べてゆくタイプ。中近東→ウクライナ→フランス南部(多分)と、相変らず移動する距離が半端ではなく、各所での冒険はアクション含めなかなかドラマティック。大いに楽しめた。『額の宝石』を面白く読めた人は、続けて付き合いましょう。

*1:まあ訳文しか読んでないんですがね。