不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

刑事の誇り/マイクル・Z・リューイン

 万年夜勤刑事だったリーロイ・パウダー警部補は、失踪人課の長になった。しかし部下と言えば、バイトのうら若い秘書しかいないし、やっと刑事の部下が来たと思ったら、何と先の銃撃戦で車椅子に座るようになった女性キャロリー・フリートウッドなのだ。しかし彼は、ぼやきつつも夜勤刑事時代と同様に忠実に、半ばワーカホリックに仕事に打ち込むのだった……。
 『夜勤刑事』に引き続き、素敵なまでのモジュラー型刑事小説。失踪人課に持ち込まれる様々な案件が流されてゆき、その中から物語の支柱となり得る事件がかつ消えかつ浮かぶ様が、とても良い。しかし本作は、何はなくともパウダー自身の物語という側面が打ち出される。彼の軽妙な台詞の数々が忘れがたいが、今作はそれに加え、彼と息子の交流も含まれる。そして何よりも興味を惹かれるのは、パウダーがフリートウッドを非常にあからさまに《狙っている》点であろう。相当年齢が下の彼女を、パウダーが射止めることができるのか、読者としては気が気ではない。そして今回もアルバート・サムスンは出演する。やはりサムスンは、外部視点から描くと非常にカッコいい。
 そんなこんなで、今回も非常に素晴らしい作品であった。主人公の人間性にかなり踏み込む点で、リューインの諸作の中における特徴付けも顕著である。広くお薦めしたい傑作である。