不壊の槍は折られましたが、何か?

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荒ぶる血/ジェイムズ・カルロス・ブレイク

荒ぶる血 (文春文庫)

荒ぶる血 (文春文庫)

 1913年メキシコ。ある娼館に不気味な雰囲気を身に纏う男がやって来て、そこの女の一人アバ(本名エラ)と寝る。そして彼女は妊娠。一方、それを知りつつ、エラを愛するようになったカレン・ヤングブラッドは、彼女の妊娠を知りつつ身受けし、結婚する。
 ……次の章で、物語はいきなり「おれ」の一人称に切り替わる。この「おれ」は、名をジミー・ヤングブラッドといい、メキシコ国境付近のアメリカの町で、ギャングのボスに雇われて殺し屋をやっているのだった。
 『無頼の掟』に引き続き、血沸き肉踊る青春ギャング・ストーリーが繰り広げられる。トータルでのテンションは『無頼の掟』を凌駕する大変なもので、主人公の語り口にも、相変らず粋がった素晴らしいユーモアに溢れている。プロットも前作以上に手が込んでおり、ボーイ・ミーツ・ガール小説*1としても人物描写への踏み込みはより深くなっていて、非常に満足することができる。
 2連発で傑作をものしたジェイムズ・カルロス・ブレイク。ひょっとすると、彼はジム・トンプスンと並び称すべき存在なのかも知れない。ギャング小説というのは流行らないのかも知れないが、『無頼の掟』も『荒ぶる血』も疑いなき傑作であり、もっと広く読まれるべきなのである。お薦め。

*1:と言うには悪逆過ぎるかも知れんが。