千一夜の館の殺人/芦辺拓
- 作者: 芦辺拓
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/07/21
- メディア: 新書
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まずまず錯綜したストーリー展開と、よく作り込まれたプロットにトリック・伏線を楽しむことができる本格ミステリ。ただし、OSや量子コンピューター等々の《現代事項》に関する、森江の薀蓄と見解(恐らく芦辺自身のもの)は、相変らず浅薄または強引。
「まずまず錯綜したストーリー展開」というのも、今回は残念ながら100%プラスに働いているとは言いかねる。余剰物が多いというか、この作品にここまでゴテゴテ装飾が必要であったか否かについては疑問。これには、森江のキャラの(作風に比した)薄さも影響している。真相を装飾の多さで隠そうとしたのであれば、失敗していると言わざるを得ない。《千一夜物語》と殺人物語の絡み方も、いまいちピンと来ない。
ただし表現意欲は高く、凝った作品であることは間違いないので、芦辺ファンならば楽しめるだろう。