死の演出者/マイクル・Z・リューイン
死の演出者 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-2))
- 作者: マイクル・Z・リューイン,石田善彦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1993/01
- メディア: 文庫
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単純明快そうな事件が、次第に様相を異ならせてくる。その様態の移行は、サムスンの絶妙までに《等身大》の語り口に乗せられて、非常にスムーズに進められる。明らかになる真相もなかなか頭が良い。もちろんとてつもなく変だったり、ガチガチなまでの論理構成を見せたりはしないが、プロットがよく考えられているのは間違いなく、『A型の女』と同様、ミステリ的にはなかなか満足できるはずである。
ただし、『A型の女』は、ヒロインの少女を通して笑いや涙を誘う面があったわけだが、『死の演出者』は完全に大人たちのドラマとなっており、笑いの要素こそサムスンの語りでふんだんに出しつつも、物語は狙いすましたような《泣ける》展開を見せない。とはいえ、適度にセンチメンタルなので、湿っぽさや悲しみも感じられる。こちらの方がリュイーンの《核心》に近いのだろう。
というわけで、これまたお薦め。読みやすく、薦めるに当たって遠慮しなくて良いのは非常にありがたい。