不壊の槍は折られましたが、何か?

ミステリ書評家のブログのはずだが……。

暁の女王マイシェラ/マイクル・ムアコック

暁の女王マイシェラ―永遠の戦士エルリック〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

暁の女王マイシェラ―永遠の戦士エルリック〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

 一方的に逆恨みして付け狙う魔術師セレブ・カーナ(前作に比べて滅茶苦茶パワーアップしている)に追い詰められたエルリックだったが、昏々と眠り続ける美しい女王マイシェラを救ってくれと頼まれて、共通の敵であるセレブ・カーナに戦いを挑むのだった。
 コルム及びエレコーゼも登場する、相変わらず召還シーンが素晴らしい一編。叙事詩的な筆は、感傷的ではあるけれども一つのシーンに拘泥せず、非常にスピーディーに物語を綴ってゆく。そこに人生に対する洞察といった深みはないかも知れないが、とりあえずこの世界観に浸っておきたい。そう思わせる作品だった。正直全然ムアコック体験が足りていないので、シリーズのオーバーラップもそれ程ピンと来る段階にはないしね。
 以上で感想は終了なのだが、ムアコックの前文で(個人的にだが)吹いた。ムアコックはいきなり、こんなことを言い出す。

 一九五○年代後半から一九六○年代前半にかけて、わたしとバリントン・ベイリーJ・G・バラードは数日おきにナイツブリッジで会い、みなでいわゆる英文学の転覆をもくろんでいた。

 ムアコック、バラードと、あのベイリーが並んでいる! ベイリーあんた何やってるんだ(笑)。