死の舞踏/ヘレン・マクロイ
- 作者: ヘレンマクロイ,Helen McCloy,板垣節子
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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ヘレン・マクロイの処女長編。完成度が高く、筋運びもたいへんスムーズで緩急も自在だ。最初から芸風が完成していたことを示しており、読んでいて普通に面白い。もちろん、フロイト学説に依存している点は時代を感じさせるが、心理的手がかりは巧妙に整えられており、なかなか心地よい《解明》を迎えることができる。また、テーマの一部に、現代的な観点から見ても興味深いものが含まれている。
もちろん、マクロイ自身が『死の舞踏』を越える作品を多く書いているので、マクロイ初体験に向いているかどうかというと微妙である。しかし、先述のように普通に面白いので、特に構えず読む*1のであれば、広く気軽にお薦めできる作品といえるだろう。マクロイヤーは当然必読。
……しかし問題は、訳者。訳文自体はそれなりだが、しかし……。これはちょっと厳重注意ではないか。板垣節子に、自分はミステリを訳しているのだという自覚はあるのだろうか?
*1:「これがあのマクロイなのだ!」という気負いはダメですよ、ということ。